地域観光 振興作戦

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呉=観光振興計画(案)パブリックコメント   2021-7

8. 市民総ぐるみ観光推進体制と、周辺地域連係



  【1】  はじめに 
  私たち観光ボランティアは、各地から来訪する観光客を通して種々の情報やアイデアに接します。 その中で、例えば広島や宮島に来訪する観光客を来呉も勧誘する場合など、観光客に呉来訪を薦めようとして直面する問題など、呉観光振興の課題や対策について考察します。
  コロナ禍が終息すれば、訪日客も含め爆発的な観光ブーム再来が予想されます。 しかし最近、地方創生や街興し改革が辺鄙な山奥まで浸透し、交通機関も発達し、全国の観光事情は一変しています。
 つまり(観光客は) 1日の移動範囲が著しく拡大し、何処でも好きな処に行くことができます。
 しかし ツアー日数は延長されません。 結果として ①人気スポットや人気ルートは超過密(オーバーツーリング)の反面、 ②多くの地域は、単 なる素通り地に変ったり、観光客が減少する現象も多く見られます。 しかも③ツアースケジュールは非常にタイトになって、例えば広島や宮島観光に合わせて「呉観光も・・・」と言うのは中々実現しません。

  ”呉周辺”には、❶瀬戸内の絶景を始め、自然条件や地理条件に恵まれ、❷江戸時代の文化・風俗を彷彿す る歴史遺産や、❸近代日本形成の針路を決定づけた呉軍港関連の遺構や歴史遺産など、 全国でも第一級の観光資源が揃っています。
 しかし、次の条件が揃わなければ、観光客(大衆)は来訪しない、来訪しても満足されません。
    ①呉固有の観光資材が、観光客の探勝目的と合致すること
        固有の観光商品(売り物)の内容が、(買い手に)正確・明瞭に伝わる表示方法
    ②来呉して、「1日(終日)観光(or滞在)満足度」が充足できること
        1日を楽しく過ごす施設が揃い、遊興プランが組み易いこと
    ③ 「呉を経由する観光ルートの話題性」があること
        マスコミやインターネットの話題に頻繁に俎上すること



   【2】 "呉"が観光目的地に選ばれる為の ==現状課題==  
 そんな観点から、呉の現状を見ると、次の様な課題が挙げられbます。
 ❶ 呉固有の特長=観光「売り物」(主題)は何か? ==「軸」が見えない==
   ①呉固有の特徴として、呉観光の主柱にすべきアイテムとしては、
  ◆瀬戸内絶景、◆江戸時代から明治・大正・昭和~に至る歴史回廊、
  ◆海軍関連の遺構、遺産等
   ②(観光客が)呉に興味を感じ、来訪を促す「呼び水」としては、様々なジャンルのアイテムが必要です。例えば
    ◇グルメ、◇ユルキャラ、◇映画や大河ドラマ、◇体験、◇保養、◇教養娯楽、
   ◇スポーツレジャー等々
    上記の内、①呉本来の「観光商品」(御本尊=主軸)と、②流行や人気にあやかる「客引きアイテム」(枝葉)が混同すれば、軸がフラフラして、呉を象徴する「本来の特徴」は、世間評に定着しません。 呉の紹介方法や情宣活動は、呉の「売り物」(呉固有の特徴)=「軸」がしっかり定着する様工夫が必要です。
 ❷ 呉で;「1日(終日)単位の観光(or滞在)満足度」の確保が難しい
 観光素材が幾ら豊富でも、1日を効率よく観光や体験などで過ごせなければ「猫に小判」です。 交通機関等の問題で効率よく観光、または 1日を過ごせなければ、猫に小判です。   呉の場合、観光素材が分散していて、交通機関がネックになるので、バスツアーやクルージングなど「団体ツアー」を観光振興政策の柱にすべきと考えます。
 ❸ 「団体ツアーコース」がワンパターン化し、変化に富むコース設定ができない
   呉観光(団体ツアー)は、《大和ミュージアム、下蒲刈、御手洗》= 3ヵ所の見学が ほぼ原則(固定観念)化しています。 現地の見学順路も ガイドも、滞在時間も、受入体制も全て固定化 しています。 それは旅行会社(団体ツアーコース)は勿論、行程の時間配分も、現地の見学順路も、観光ガイドコースも・・・全てワンパターンにルーチン化しています。それはツアー主催者も、受入側にも「当然、当り前」と固定観念になっているので、他の変化に富むツアーコースは催行されません。 つまり折角の 「お宝スポット」もごく一部しか、殆ど活用されていません。
 ❹ 全呉を通貫する「軸=ストーリー」がない == 呉観光の感動が弱い ==
    現地ガイドの説明は、狭い拠点内の内容に絞られ、全呉総合ガイドブックも、広報宣伝も、 各観光拠点や、物件(点)毎に羅列するだけで、呉全体を貫くストーリー(線)が繋がらない。   それは、個々の物件(点)を何ヵ所巡っても 「雑貨店の商品をパラパラ眺める」感じで、観光素材は幾ら豊富でも目移りするだけで、大した感動も印象も残りません。
 ❺  観光客のリピーター化や 呉ファン育成の道が閉ざされている
  ◇現地観光ガイドは、現地のことのみ要領よく説明しても、他所の話題や全呉の情報
  は説明しようとしない。
◇ガイドブックも、モデルコースも、観光ボランティアも、観光案内も、初めて来呉する
  一元客が対象で、リピーター用の資料もパンフレットも、観光案内も極めて不備。
◇それではお客様には、全呉の総合力(魅力)は愚か、見残し物件の存在すら
  気づかず、リピーターや呉ファンになる 糸口にならない。
◇(一般観光客は)再来訪しても、(見残した箇所への)交通機関も不便、現地に
  着いてもガイドもいない、ひっそり閑として何の変哲も感動も感じられない。
◇団体ツアーも、「リピーター用コース」を設けるとしても、既存コースが定着している為、
  並設は中途半端で現実的でない。
 ❻ 住民ぐるみ協力(住民パワー活用)体制が貧弱  == 観光先進地との格差要因 ==
   (現地で)観光ガイド等の説明を受けるお客様は、全体の1%にも達しません。
 しかし先進地では、現地住民やコンビニ店員や通行人等との会話など、街全体の雰囲気がそれをカバーし、大きな機動力になっています。
 しかし呉の場合、全域を通じて住民は観光客に対し概して無関心で協力ムードは低調です。 その主な要因としては、次の様な事情が考えられます。
  a.観光の恩恵は一部の住民や業者に限られる、
  b.経済的利潤は道中の別地域に吸い取られる、
  c.住民の高年齢化が進むと不特定な外部者の流入を好まない、
  d.観光業者や各ボランティア団体は、自団体または地元ファーストで「全呉意識」
   が乏しい。
  e.行政機関も、高度な知性や情報分野にボランティアを重用する発想が薄い 等々



   【3】 呉観光振興計画(案)
   現状について、以上の課題が把握できれば、観光振興計画は自ずと絞られます。
 つまり、次の 2点を目指して「観光振興計画」を立案すれば、上記課題は大半が解決します。

住民ぐるみボランティア態勢の構築と、 観光関係団体のワンチーム化
  最近の観光急進地(ライバル)などの成功例には、最近急増した団塊世代退職者などが「観光ボランティア」や「街興し活 動」を生き甲斐にして、様々なアイデアを発案し住民も行政も一丸となって支援する・・・「住民ぐるみワン チーム」となった「住民ぐるみパワー」が大きい機動力になっています。

 しまなみ海道「サイクリングロード」の経緯や、瀬戸内国際芸術祭も住民の中には、熱意の余り自分の空き家を作品に改造して出展する人もいるとか・・・。
 最近の住民パワーは「何が欲しいか?」でなく、「何がしたいか?」にシフ トし、強力な機動力になっています。

 しかし呉の場合、観光関連の市民団体は、観光ボランティア(大和ミュージアム、下蒲刈、御手洗、倉橋等) や、町興し団体、各種事業者組織などがありますが、何れも狭い地元、または各団体の内部組織で、全呉一丸の チーム力を発揮できる仕組みになっていません。
 しかし関連団体のワンチーム化、住民ぐるみ協力体制が構築できれば、視野の広いアイデアや発想力も、機動力も、観光推進基盤も、格段に増強され、上記課題は殆ど解決する筈です。
 それには、各種セミナー、勉強会、お宝見学会、観光論文募集などを頻繁に催し、「市政だより」など 広報もフル活用して、市民層の意識を高めるあらゆる啓発プログラムの挑戦計画の立案を提案します。

 しかしそうは言っても、一般市民層の意識昂揚はそんな簡単にできるものではありません。
 観光振興計画には、行政サイドの広告宣伝やその他、強力な指導やバックアップの下で、例えば次の様な、進め方(手順)が具体的に示されなければ、結局、何も動かないでしょう。 それも早急に着手しなければ、計画(本体)の推進にも大きな足枷になるでしょう。
 進め方(手順)の例
  ① 啓発活動の第一段階は、先ず最も理解を得やすい既存の観光ボランティアや
    観光関連団体のメンバーを主対象とし、その中から 「全呉観光振興(ワンチー
    ム化)」に共感する人材を発掘する。
  ② 発掘された人材が先頭に立って、全呉視野の(既存ボランティアにはできない)
    斬新なアイデア提案を出し、活き々々と活動する姿が市民の目に映ることが、
    第二段階です。
   ③ それを手本にして、一般市民層にも働きかけるのが第三段階です。

❷  「呉周辺; 1日(終日)観光(または滞在)満足度」と、「呉を経由する観光ルート開発」  
    それにしても、①対象エリアを「呉市内」に限定し、②各見学拠点はそれぞれが独立運営方式では、「終日観 光(または滞在)満足度」を充足するプランは極めて限定的です。 しかしそれが「呉観光の現状」です。
 それには、対象エリアを(呉市周辺まで)広域化すれば、もっと変化に富む「観光物件の組合せ」が可能です。 観光素材(点)が多数になれば、(線)に繋ぐ組合せも自由になります。 それを物語にした探訪ツアーを「観光商品化」すれば、次の様な多彩なツアー商品 が揃います。 各物語は何回かの「連続ドラマ式」に編集すれば、「リピーター」や「呉ファン」育成の道も開けます。

 ◆ 【物語ツアーの商品化】のテーマ例
    個々の観光物件(点)を物語(線)に繋いで、例えば瀬戸内景観の物語、鎮守府
   物語、日本海軍の物語、戦艦大和の物語、大東亜戦争史、江戸時代の庶民生活、
   朝鮮通信使、北前船、・・・     村上水軍物語・・・等々、興味深い物語の材料は
   幾らでも揃います。  各々の物語に沿って探訪するツアーを観光商品化すれば、
   多彩な「メニュー揃え」ができます。

 ◆ 【呉を経由する観光ルート(数日ツアールート)開発】の例
    更に対象エリアを拡げ、各々の物語を「連続小説」に繋げば、例えば次の様な
   (何日かに跨がって)「呉を経由する観光ルート開発」の道が開けます。
  ①(瀬戸内海汽船、現地観光施設、旅行会社等との連係して)
    瀬戸内絶景、大東亜戦争、瀬戸内水軍、北前船の物語・・・・等々の遺構探訪コース ;         ◇広島・宮島~呉~しまなみ海道
      ◇広島・宮島~呉~松山
      ◇広島~呉~周防大島~芸予諸島~忽那諸島
  ②(軍港四市間の、現地ガイド連係を進め) 日本海軍軍港(日本遺産)探訪コース ;            ◇横須賀~呉~佐世保~舞鶴

 ◆【呉;1日(終日)観光充足度向上】の例
    対象エリアを(呉市内に限定せず)広域化すれば、もっと多彩な変化に富む(見学先
   の組合せプラン)が設定できます。



 【4】 総 括  
 観光振興計画は、目標とすべき「将来ビジョン」を描き、実現する道筋を示すものです。「将来ビジョン」とは、「呉内部の諸事情や、呉固有の特徴(長所)や、弱点も・・・」最も精通している「呉内部の識者」が中心になって、『特徴(長所)を最大限活かし、弱点は上手くカバーするもの』を起案しなければなりません。
  それを外部識者などに委ねれば、呉固有の特徴が薄れ、普通のありふれた都市造りしかなりません。
 また、他地域の成功事例は、その裏にある内部事情(例えば住民ぐるみ機動力や結束力など)も合わせて考えなければ。呉に当てはまりません。

  観光振興は裾野が広い事業なので、理想的な将来ビジョンを描いて、必要なアイテムを挙げれば、例えば(博物館や美術館とか、 レジャー・飲食・宿泊施設とか、案内標識整備・・・等々)際限なく膨れ上ります。 しかしそれらを同時並行して建設・整備するの は至難の業です。 しかし順次(少しづつ)整えるのでは、効果が現れる前(完成する前)に財政破綻してしまいます。
 それには必要なものを列挙するのでなく、『現状の最もネックポイント(障害要因)から、1件づつ地道に解消』していけば、対策効果は確実に現れ、基盤は確実に強化される筈です。  →その成果を足掛かりにしながら「一歩筒前進」を計る・・・→ の発展サイクルが基本です。
観光振興計画には、手順が具体的に示されなければ、現場は動けません。

  計画推進には、『誰がリーダーで、どの様に関係団体や周辺市町や、住民とも話会い説得していくか・・・等』の役割分担が先決です。 そして専任者がしっかりすれば、多少の計画不備は、それぞれの持ち場で英知を結集して対応できます。 しかしそれをスキップして「現場に一任」するのでは、誰も何も動かせないでしょう。■




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