地域観光 振興作戦

e-mail

更新 2021. 2
2. 呉=観光作戦(観光ボランティアの役割)  (2019/ 10 記)
 
【1】  はじめに 
   最近、訪日客を含む観光客数の急増により、観光ブームは一段と活況を呈しています。 しかしそれは、①辺鄙な山奥まで地方創生や街興し革命が進展し、②交通機関の発達により 1日の移動範囲の急拡大・・・等が相俟って、個々の観光スポット事情は一変しています。
 つまり観光客は、何処でも好きな目的地が選べる為、人気スポット(ルート)に溢れる反面、他の観光地は単なる素通り地点化や、恩恵の薄い観光地も多くなっています。

 ”呉周辺”には、❶瀬戸内景観など地理的条件に恵まれ、❷江戸時代の文化・風俗を彷彿する歴史遺産や、❸近代日本形成の針路を決定づけた呉軍港の遺跡や歴史遺産など、全国的にも第一級の観光資源(景観も歴史遺産も)が揃っており、観光客誘致の対策や努力が各方面でなされています。 しかし中々時代の波に乗っているとは言い難い状態です。

  しかし最近の観光発展地の例を見ると、『知力や体力をもてあます定年退職者』などが中心となり、住民ぐるみのボランティア活動が必須条件になっています。
  それは、私たち観光ボランティアも、来訪客を待ってガイドをするだけでは、観光客増加は望めません。 地域(呉)活性化の為、如何にして観光客を呼び寄せるか・・・?、世の中の動きに合せた観光ボランティアの役割について考えてみたいと思います。
         目     次
【1】  はじめに
【2】現状の課題 ***** 「観光客が(呉に)来訪し難い」 事情 ***** 
  2-1 観光目的地に"呉"が選ばれる為の課題
2-2 リピーター客が創生する為の課題
2-3 「観光ブーム」の波に乗る為の課題
2-4 観光戦略に必要な 「外部情報」入手と観光ボランティアの課題
  1) 時代に即した「観光戦略」を立案する仕組み(体制) の課題
  2)「観光ボランティアと、上部団体(役所等)のコラボ体制」の課題
【3】観光ボランティアと、上部団体(役所等)のコラボ 強化対策
【4】 総 括   ****** 観光ボランティアの役割 ******
 


   【2】 現状の課題  ***** 「観光客が(呉に)来訪し難い」 事情 *****  
 2-1. 観光目的地に"呉"が選ばれる為の課題
   呉周辺には、魅力ある名勝物件が豊富に揃っています。
 しかし広島や宮島には連日大勢の観光客が来訪しても、近くの "呉"には中々来訪しません。
  ”呉”が観光目的地に選ばれる為には次の様な条件が必要です。
 ❶ 知名度とインパクト
    知名度は必要条件です。 しかし知名度の要素(例えば”呉氏”の行動等)と、呉本来の魅力(特異性=歴史・景観等)が一体化しなければ、観光客にはインパクトになりません。
 ❷ 交通機関の問題
 しかし満足度の高い「1日(終日)観光」が容易にできなければ、観光客は来訪しません。
(呉の場合)バスツアーなど「団体客誘致」を主にする観光戦略を考えるべきです。
 ❸ 来訪前、旅行先を検討中のお客様を招き入れる配慮
 役所担当者も、観光ボランティアも、街興し団体も、現に旅行先を検討中のお客様や、旅行会社からの問合せには、役所担当者も、観光ボランティアも、街興し団体も、事務的な受け応えしかしていません。(相手の気になって)
 『(来訪して来た)お客様』の"おもてなし"は当然ですが、リピーター化は期待できません。
 ❹ 観光コースの問題
    一般観光客(団体ツアーを含む)の「終日観光コース」は、極めて限られます。 リピーターにとっての「終日満足コース」は「皆無」です。
 ❺  観光ガイドの問題
   一般観光客(団体ツアーを含む)は、 現地で説明がなければ、呉本来の魅力は殆ど実感できません。 しかしガイドは常駐していません。 実際にガイドを受ける観光客は全体の 1%にもなりません。
 ❻ 地元住民の 「観光意欲ムード」が盛り上がらない
  現地住民や通行人も、観光客には概して無関心です。
 それは、住民には次の様な事情で、先進観光地との格差は拡大一方です。
 a.恩恵は一部の人に限られること、 b.経済的利潤は道中の別地域に吸い取られること、 c.住民の高年齢化で不特定な外部者の流入を好まないこと、 d.現地ガイドも再来訪(リピーター化)を促す「戦略」は極めて低調です・・・等々

 2-2. リピーター客が創生する為の課題 
    私たちは、"呉"エリアに来訪されたお客様には再来訪(リピーター化)を促す、若しくは友人やSNSなどで感動の拡散を促そうとします。 しかしそれは、次の何れかの要素が揃わなければ実現しません。
❶呉を観光して感動があること、 ❷見残し・未見学物件への興味、 ❸文化・教養・知識の増進、 ④エキサイティング、 ⑤保養・休養・健康増進、 ⑥趣味・娯楽・グルメ等の快楽享受、・・・等々
   この内、観光ボランティアの役割と関係の深い❶~❸について取り上げます。
 ❶ 呉観光で強い感動を与える為の課題
  観光ガイドの課題 
     総合パンフレットには各スポットが個々に羅列され、現地ガイドも狭い地元スポット毎の説明をしています。 観光客はそれを何ヵ所周っても 「雑貨店の商品をパラパラ眺める」感じです。 「”呉全体”を貫く魅力の(底力=『芯』)は何も実感できません。  
    しかも現地でガイドの説明を受ける人は 観光客の 1%にも満たしません。
 添乗員も通常、観光ガイドはしません、したとしても「”呉”に限った魅力(本質)」は説明できません。
 『(呉には)他にも魅力物件(見残し物件)が沢山ある』ことを伝える「ガイドや仕組み」がありません。
     一般観光客は、(呉は)「そんなもの」と満足顔で帰途につきます。
折角来呉し満足顔て帰っても、殆どの観光資源はその存在すら気づかず(呉の)魅力評価対象になりません。
   『 バスツアー コース』の問題 (=各スポットでの「見学(滞在)時間」の問題)
      各スポットでの【見学(滞在)時間】は旅行会社で設定され、最短時間に固定されるのが通常です。 それは、①魅力ある観光スポットが各地にでき、②交通機関も1日の行動範囲が拡大した為で、る時代の趨勢と言えます。 しかしそれを、そのまま受入るのでは;、
   
◆折角呉に興味ある人には中途半端で、全行程を通してテーマ『芯』も定まらず、呉の魅力(底力)=「観光満足度」の実感も不十分で、再来訪を促すこともできない。

◆ 『”呉の魅力”(お宝)』は極く一部しか(殆ど)活用できない、
     と言う  ”呉”の観光振興にとっては、致命的なマイナス要因です。
      解決策として、各スポット毎の見学(滞在)時間は、ツアー目的や、団体客の嗜好に合せて自由に調整(延長)できる戦略を考えねば、ジリ貧しかありません。
 ❷ リピーター用 観光コースの課題、
     現在、『リピーター用”呉”観光コース』の催行は、現実的に容易でありません。
 バスツアーコースも、事実上、初回来訪者を対象のワンパターンしか催行されていません。
パンフレットや観光ガイドサービスなども、全て、初回来訪者に合せています。
      従って、リピーターとして来呉しても、また初回と同じコース、同じ説明を聞くか、または非効率的な移動手段で、初回見残し物件を周ることしかできません。
      しかし旅行会社のツアープランナーは、”呉”の情報や知識に詳しい訳ではなく、人気観光地の発掘や人気コース開発に熱心でも、視野は呉以外のもっと広範囲に向いています。
 その為「”呉” は通過点」として一部スポットが利用される以外、リピーター用などの 新しいコースの開発は、先ず見込めません。

 2-3. 「観光ブーム」 の波に乗る為の課題
   外部環境は、新しい道路開通、交通機関、訪日客の増加、時代的流行・・・等々、刻々と変化しています。 しかし受入側は 「井の中の蛙」では、世の中の変化に気づかない(or 気づいても改め様としない)状態が続いています。 例えば;
 ❶ 現在催行されている「観光ツアー」では、《呉の総合的魅力(底力)》は発揮できない
  各観光スポットは、観光ボランティアも 町興しグループも、依然として(狭い)地元独立系で管理されています。 それはお互いに干渉されない反面、連係協力も 競争意識も働かない(縄張り)状態が保持され、観光客に ”全呉のトータル魅力” を伝えるという発想は、極めて希薄です。
 ❷ バスツアーなどの団体旅行の問題、
    呉観光のツアーコースは、事実上ワンパターンしか催行されない。
観光スポットの地理的と、各スポットの見学(滞在)時間の組合せを考えると、呉の終日観光コースは『大和ミュージアム=下蒲刈=御手洗』にほぼ限られます。 それでは 「呉のお宝」は大部分が宝の持ち腐りです。 しかしそれが「当たり前」になって、改善意識は全く生まれません。
 ❸ 観光客の観光移動ルートの変化
     例えば、①最近、観光客はタイムスケジュールは非常にタイト化し、各々の観光スポットの見学滞在時間も最短化されています。 それは沢山の新興スポットが開発され、1日の移動範囲の急速拡大による時代の趨勢です。 しかし現地ガイドも最短時間に合せて誠心誠意ガイドするのでは「呉の魅力」は矮小化してしまいます。
 広島や宮島に押し寄せる観光客の、前後の宿泊地は京都や大阪です。 それを(近くの呉に)呼び込む戦略は「副業」としてはともかく、本業として勝ち目はありません。
 呉(周辺)で 「終日観光満足度」を最大化する戦略を考えなければ、沢山の競争地の中から(呉が)浮上することはできません。
 ❹ 中核都市として 「ボランティア機能発揮」の課題 
    観光ボランティアも、街興しグループもそれぞれ熱心に活動しています。
しかし狭い「地元愛者が主体」で、周辺地域とは互いに干渉も連携協力もしない 「地元ファースト意識(縄張り感覚)」が根強く、呉(周辺)地域の一体化も、時代の趨勢に即した観光ボランティア戦略も、立てられる体制にはなっていません。

 2-4. 観光戦略に必要な 「外部情報」入手と、観光ボランティアの課題
  (呉が)観光目的地に選ばれ難い課題は、個々の問題(上述)よりも、寧ろ①「観光ボランティア」と、②「上部組織(役所等)」の関係(仕組み)に重要な課題があります。
    つまり、①外部情勢や観光客心理の動向を捕える仕組みと、それを②「観光客誘致戦略」に結びつける仕組みが、時代にマッチしていなければ、有効な戦略は立てられません。
 1)  時代に即した「観光戦略」を立案する仕組み(体制) の課題
 観光戦略の立案は、従来発想では ❶「観光関連業者」や、❷「大学の先生や専門家(セミナー等)」が専門部会メンバーに専任されますが、次の様な 現実に即した戦略立案には、殆ど役に立たないのが通例です。
     ①観光目的地として”呉”が選ばれる為の戦略
     ②一度、”呉”を訪れた観光客が、再来訪(リピーター化)する為の戦略
     ③外部情勢変化を捉え、敏速な”呉”の適応体制を構築する戦略
   それには、最近の観光急進地では、❸「観光ボランティア」の発想や、住民ボランティアの機動力が主流になっていると推察されます。
 ❶  観光関連業者の場合の問題;
 ホテルや商店街などの業者は来訪した観光客に接しますが、呉が、観光目的地に選ばれ難い本質理由は聴けません。 観光客誘致の対策や立案も、イベント実施や施設整備や工事請合いなど業者の利益が根底で、 「トータルメリット」を考えた発想や戦略はできないでしょう。
  大学の先生や専門家(セミナー等)の問題;
 観光客動向の統計や、各地域の取組みや成功例などが理路整然と紹介されます。 しかし具体論では 「呉本来の特質(差別化ポイント)」と合致する例は先ずあり得ません。 容易には役に立たないのが通例です。
  それに対し「観光ボランティア」の場合;
 全国からの観光客への「観光ガイド」を通して、全国各地の情報や、来呉に関する困りごとなど「観光振興」に最も重要な「生の声」を聴くことができます。
 例えば、最新の人気スポットや、脚光を浴びている観光ルートや、観光客の動向や・・・、特に広島や宮島でガイドしながら、近くの”呉”について 知名度や、呉に来訪し難い事情も、手に取る様に聴くことができます。
     現に、瀬戸内国際芸術祭も、しまなみ海道「国際サイクリングロード化」も、観光急伸は、観光ボランティアなどの発想を発端に「住民ぐるみ推進力」が大きな機動力と見られます。
  逆にボランティアパワーを上手く活用しないで低迷する例はあちこちに見られます。
  そんな観点から、(呉の)観光発展には、観光ボランティアの役割は大きいと考えます。
  しかし「上部団体(役所等)とのコラボ体制」 がしっかりしなければ役割は果たせません。
   それには、次の様な課題があります。

   2) 「観光ボランティアと、上部団体(役所等)のコラボ体制」の課題
   観光ボランティアの情報やアイデアは、上部団体(役所等)に利用されて大きな成果に繋がりますが、ボランティア単体での成果は極めて限定的です。
  それには、①観光ボランティアと、②上部組織(役所など)の担当者は、双方が次のことを会得しなければ、コラボ体制はできません。
   ❶ ◆観光ボランティアは
 観光客から、有益な情報の収集能力と分析能力を磨きながら、上部団体(役所など)に有益なアイデアを提案する。 その実績実績を地道に積重ねていかねばなりません。
   ❷ ◆上部団体(役所など)の担当者は
 常に先進地の実態を注視しながら、時代に即した目標(課題)を提起して、『ボランティアの能力育成と上手く活用する技量』をブラッシュアップしていかねばなりません。
  ❸ ◆しかし現実は、
    ①上部団体(役所など)の担当者も、ボランティアグループも、『 行政施策に、ボランティア如きの「知的情報や判断」は当てにしない・・・』と言う古典的観念が強く根付いています。
    その為、ボランティアは、情報収集や分析力などのブラッシュアップ努力をしない、
上部団体(役所など)の担当者も、(ボランティアの知的資質を)利用しようとしない、
  その結果として、双方の (知的情報や判断等の)コラボ体制は成立しません。
    ②既存の観光ボランティアグループは、強い郷土愛者による観光ガイドが主体で、周辺地域との連係や、呉市(全域)の観光戦略や新情報を、上部団体(役所等)に提言したり提案する発想は殆どありません。
     しかしそれが改まらない限り、(呉が)観光地として波に乗ることは、先ず難しいでしょう。


   【3】 観光ボランティアと、上部団体(役所等)のコラボ 強化対策
 これには、観光ボランティアと、上部団体(役所等)担当者は、双方共次の能力を養い、互いの情報力や指導的立場を利用し合うことが必要です。
❶   ボランティアグループは、
  ◆活動から得る情報を、上部団体に提供し、観光戦略などを提案できる能力を養うこと。
❷   上部団体(役所等)担当者は、
 ◆旧来の固定観念を改め、『ボランティアの能力育成と活用術』を養うこと。
 ◆常に先進地の実態を注視しながら、時代に即した目標(課題)を提起すること。
   それが無ければ、ボランティアの資質・能力は向上しません。
 ◆来賓挨拶などでは、必ず将来ビジョンや、それに伴う課題を示すこと。
   (それを示さないで)単なる観光ガイド活動や、単純作業の協力などをベタ褒め
    するのは「百外あって一利なし」です。
 ◆ボランティアへの補助金などは、将来目標に対する達成情況に応じて考えること。
 
❸     しかし既存のボランティアグループは、活動範囲を狭い地元に限定した「郷土観光ガイド同好会」と言う(旧来的)性格が支配的です。
 それに情報収集や分析能力や、(全呉地域の)観光客誘致戦略などを要請しても、却って混乱を招き兼ねません。
    それを考えると、上述の考え方に、同調的なメンバーを募り、「既存グループの欠落部分を補足」する 《新たなワーキングチーム(開発チーム)を結成》 して、既存グループと「車の両輪」を構築することが現実的と考えます。
   しかし長年根付いた旧来的観念は、ボランティアや当事者の自主性では改められません。 上部組織(役所等)からの指導やバックアップがなければ何も進展しません。

  
 【4】 総 括   ****** 観光ボランティアの役割 ******
  観光客数の増加は、全国あちこちにできる魅力的観光地に吸収される一方、時代の変化に乗れず低迷する老舗観光地の例も見られます。 それは”呉”も例外ではありません。
 しかし呉周辺には、景観も、歴史も、文化も第一級観光資源があり、急発展する底力が備わっていますが、「呉のお宝」は大部分が持ち腐り状態になっています。

 それに対し、観光ボランティアは、全国からの観光客へのガイドを通して、全国的な動向や、人気スポットの最新情報や、”呉”についても 知名度や、来訪する為の障害要因も、手に取る様に聴くことができるます。 それを基にすれば、上述の課題には色々な解決策が見つかります。
  しかし現実は固定観念が根強く、行政施策や方針設定に、観光ボランティア如きの知的情報や判断を確かめること先ずありません。

   しかし、最近の観光急進地を見ると、急増した定年退職者などの「観光ボランティア」や街興しボランティアなどが軸に、住民ボランティアや、行政も一体なって機動力を発揮するのが常套策と見受けられます。 さもなければ「観光客誘致合戦」には勝てないでしょう。
  それを考えると、(呉の場合も)先ずは「観光ボランティアと、上部団体(役所等)」のコラボを軸にして、順次住民ボランティアや、観光関連事業者などにも輪を拡げていけば、上述の課題(問題)は殆どが解決します。
 その為の有益な情報やアイデアを提供するのが、観光ボランティアの役割と考えます。

  とは言っても、観光ボランティアは、情報収集や分析能力を磨かねば(現状のままでは)、旧来の固定観念は払拭できません。 時代の波にも乗れません。
  しかし上部組織(役所等)も、それを上手く使いこなす技量がなければ、ボランティアは成長しません。 双方の事情が噛み合わなければ卵も鶏も生みだせない、つまり時代に取り残されるのが現代の世相と考えます。■
 瀬戸内観光作戦;         8

 *****  観光振興=関連記事リンク  *****   
呉観光振興作戦 私の歴史観 呉周辺スナップ