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For SYSCO{ News letter }-- 116,117- -- |
{上} (2002 4月発行 116 掲載) | |
Θテイクオフ(Take off) 風速2〜3m,風は正面から吹き始めた。 ハーネスを付ける。 キャノピーを広げたり,ラインチェックしたり,フライト準備に周囲の人が 皆で協力して呉れる。 フライヤー同志の強い仲間意識を感じる瞬間だ !! 。 1,2,3, go! ライザーを引く手に確実な手応えを感じながら,更に引く。 キャノピーは空気を吸い込み,徐々に頭上まで上がる。 ラインに張力を感じ体重が軽くなる。 体を向き直して駆け進む・・・。 既に足が地面から浮き空中の人となる。 テイクオフの瞬間だ !! 。 地面は崖のはるか下方に・・・。もう逃げ出すことはできない。 そこは好奇と興奮と期待に満ちた世界だ !! 。 自分自身を信じ,自分自身の腕を試すには絶好の空間の始まりだ!。 ここにハーネスとはフライヤーの椅子に当たる部分。 キャノピーとはパラグライダーの傘をいう。 キャノピーは 2枚のシートが袋状に貼り合せられ多数のフレームに仕切られている。 飛行中は,正面から風を吸い込み鯉のぼりの様に膨らむ。 ラインとはキャノピーからハーネスを吊り下げている数10本の紐を言う。 ライザーはラインを約 10本づつ束ねた部分をいう。 テイクオフとは離陸すること。 |
Take off |
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Θ浮 上( Begin to fly ) 心を落ち着けて周辺を見まわす。 眼前のどの山にも尾根が連なり,山ひだが伸びている。 小丘もある。 青々とした木々は 高峰の頂上まで覆い尽くし,谷間は結構深い。 正面には果樹園や田んぼが広がる。 大きな川,道路,地形の盛り上がり,ゴミ焼きの煙……。 青い空。白い雲。爽やかな風……。 テイクオフ場には紅白の吹流しが たなびき……,眼下に横たわる 雄大で精巧な世界の中に引き込まれる。 風は山に当ると斜面に沿って上昇する。 谷は風を集めて速くする。 尾根は風をまっすぐ上に放出する。 太陽光線は大地を温め風や上昇気流を産みだす。 川は,林は……夕方,大地が冷える頃に温まる。 丘は,峰は…,風を束ねて放出する。 ・・・・・。 風には色がない。 目印もない。 目に見えない風を感じ,考え,読みながら・・・穏やかな上昇気流を求めて移動を開始する。 グライダーにはエンジンが無いので 上昇気流を探り当てない限り,徐々に下降し,テイクオフ場からランディング場まで高低差350mは 約 5分間のフライトで終了する。 あっ!,その時キャノピーが揺れ上昇を感じる。 すぐに風を読み右か(左か)に旋回する・・・。 しかしその甲斐なく・・・,また次の上昇気流を求めて徘徊する。 上昇気流は多くの場合一部の限られた地点(トリガースポット)から放出され比較的狭い範囲を上昇する。 上昇気流の外側は下降気流となって空気が対流していることが多く,広範囲の地面全体から上ることは稀である。 だから上昇気流を感じたらそれを外さない様にすぐに旋回する。 とんびの旋回も同じ理屈である)。 |
You are already in the air |
Θリッジフライト( Ridge flight ) 気流を求めて山ひだの尾根に近づいた。 弱いながらリッジが拾えそうだ。 樹木に接触しない様に、風とグライダーの動きに注意しながら,出きるだけ山肌に近づく。 近づくと少し上昇する。 しかしグライダーは停止できないから旋回する。 旋回のため止むなく斜面から遠ざかる。 遠ざかると下降する。 これを気長く繰り返しながら…・・,徐々に上がるか,下がるか… が勝負の分かれ目だ。 こうして尾根の頂上よりも上まで辿りつけば占めたもの。 山肌から遠ざかることなく自由な旋回が出きる。 尾根上50m,100m時には200m以上の高さで 気象条件が変わらない限り好きなだけステイできる。 しかし条件の良い所は他のフライヤーも集まってくる。 尾根の上は案外狭く,何があってもフライヤー同志の接触は重大災害に繋がる。 適当なタイミングでその場所を退き,ランディング場に向かう。 この間 約50分のフライトだった。 風は山肌に当たり斜面に沿って上昇する。 これを利用するのがリッジフライトで,斜面の角度,風の強さにより条件が異なる。 尾根の最上部は比較的狭いため,大勢のフライヤーが同時に利用するには限りがある。 |
---Ridge flight |
Θサーマルフライト(Thermal flight) 天気晴れ,雲量30%。 太陽光線により地面が温まり始める頃だ。 風には何の目印もない。 フライト中、突然予告無く上昇を感じた。 これがサーマルだ。 右か?左か?直感で旋回する。 少しづつ上がり始める。 旋回を続けている限り連続して上昇する。 高度計は100m, …200m…・400m…,上昇速度;3m〜8m/sec。 この高さまで上がるとかなり穏やかだ。 真下の険しい山も低く,平らに見える。 サーマルの半径もかなり広くなる。 サーマルの状況は時々刻々変化する。 今は山沿いより平野部が上昇する。 周辺を広く 一巡りして上昇ゾーンと下降ゾーンの位置を覚えフライト高度を調整する。 条件が良ければ高度 1,000m から 2,000m上ることもある。 1,000m を超えれば夏でも涼しい。 日本では震えながら飛ぶことが多い。 テイクオフの吹流しはもう見えない !! 。 グライダーは進んでいるのか…,風に押されて後退してはいないか…,だんだん見分けにくくなる。 風速がグライダー速度以上になると元の場所には帰れなくなるので危険なのだ。 遠くに見える煙を見て風の向きと強さを知る。 柔らかい雲が近づいて来る。 この雲には入ることも出きる。 でも入って方向を失ったまま流されるとランディング場には帰られない場合もある。 ・・・となると,これは高度な技能『クロスカントリーライセンス』を持たない人には許されない。 雲の中は同時に複数の人が入ると万一衝突の恐れも・・・。 今回は雲底から離れ別な場所に移動,他のフライヤーと着かず離れず1時間以上飛んだ。 そろそろ地上が恋しい !! 。 フライト中は結構緊張疲れする。 下降ゾーンを探しながらランディング場に向かった。 しかし3〜4時間くらいステイして楽しむ人もいる。 この道を更に追求するには,どんな時でも正確な状況判断と沈着冷静な行動ができる強い精神力が必要なのである。 本日,1時間30分のフライトだった。 ☆ サーマル ; 地面や山などが太陽光線に温められて発生する上昇気流。 山,川,畑など温まり易さ,冷え易さの関係で発生場所及び強さは刻々と変化する。 ☆ クロスカントリー(クロカン) ; テイクオフしたエリアを離れて飛行距離を競う競技。 風の強さや気象条件が整えば30km,〜稀には100kmを超えてフライトする人もいる。 但し,クロスカントリー技能ライセンスのない人は許されない。 |
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---Thermal flight | |
{下} (2002 4月発行 117 に掲載) | |
Θとんびと飛ぶ (Fly with kite) とんびの後を追う。 彼らはサーマルをよく知っている。 彼らはどこから来るのか普段は姿を見せない。 でもひとたびサーマルが出始めると,何処からともなく寄ってくる。 羽を広げ……,羽ばたくこともなく……,自由自在,思いのままだ。 そんな彼らにも案外遊び好きなのがいる。 しばらく並んで飛ぶのも興趣なものである。 Θアベント フライト ( Even flight ) 昼間の太陽光線を吸収した森の木々は,たっぷり貯え温気を,地表が冷える頃に放出する。 昼間の日差しが強く,風の弱い日,日没前 1〜2時間,山全体から上がる柔らかく,穏やかな…・最も安定なサーマルである。 山の上であれば何処でもば良い。 グライダーの揺れもなく,穏やかに,ゆったりとしたフライトが楽しめる。 赤,黄,青,・・・白,紫,ピンク,・・・沢山の蛍光色グライダーの群れは,時には背から,時には正面から・・・,夕焼けの空に輝きながら………, 時には真下に ライトを点灯し始めた自動車と併走しながらランディング場に向かうまで,一切の煩事を忘れる。 |
Fly with kites |
Evening flight | |
Θランディング (Landing) ランディング場上空約100m。 ランディングのための高度処理は大きな旋回を繰り返すのと、この高度では風に煽られたり,バランスを崩したりすると,もはや回復は困難で,そのまま地上に墜落する・・・ !! 。 最も緊張する場面だ !! 。 しかしグライダーは一瞬たりとも静止することができない。 着地の瞬間まで常に,対空速度30〜40km/hrを保ちながら高度を下げる。 基本的な方法はランディング地点の風下で 「横8字旋回」 を しながら高度を下げる。 この方法は絶えず着地点を正面ないし横目に見ることができるからだ。 そして適当な高度になったら,最後は必ず風に向ってまっすぐ進入して着地する。 着地の寸前両方のブレークコードを強く引くと,グライダーは,一瞬の揚力を得ると共に,スピードを失い見事なソフトランデ ィングとなる。 ブレークコード;キャノピー後端のラインを引くと翼のフラップと同じ様な変形をしてブレーキが掛かる。 フライト中は左右のブレークコードを軽く引きながらステアリングする。 強く引き過ぎると失速の危険がある。 |
Landing |
Θ終わりに(In conclusion) @フライト仲間は老若男女,国籍を超え,職業を超えた様々な人の集まりである。 フライトエリアでは煩わしい人間関係や,身分の上下もなくなり,非常に友好的,協力的で仲間意識の強い人間関係が生まれる。 そしてある時は歓談の場となり,ある時は情報の場となり, ある時は助け合いの場となる。 そんなメンバーである。 だから,ルール無視の身勝手なフライトは決して許されない。 週末を新鮮な外気の下で メンバーと集い,自分自身を信じ, 全神経を集中して飛び・・・,日常の総ての煩事を忘れて 過ごすのは非常に健康的なことと考えている。 Aこの世界では一切の責任は自己責任で運営されている。 自己過信,チェックミス,判断ミス,操作ミス,……等の 些細なミスが重大災害に繋がる。 現実に毎年何人かの人が大けがをし,時には生命を害する 事故も発生しているのが現実である。 今回は多少とも興味のある人のために,フライトの模様を描写 して見た。 しかし,決して読者に勧誘する意図も,引き止める意図もない。 一切の行動は読者自身の責任と判断で為されたい。 Bパラグライダーは開発されてまだ10数年,歴史的に比較的 新しいスポーツ。 現役人口;日本=1万〜2万人程度?、台湾=数百人程度?。 経験人口は現役人口の数倍以上と見られる。 単なるフライトのみでなく各種競技(時間競技,コース競技, 距離競技,コースと時間の正確性を競う競技等)色々な形の コンペッディションも開催されている。 国際交流も多い。 『パラグライダーはそんなスポーツだ』 と私は考えている。 |
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